教員が受ける研修とは?
「教員になりたいけど一体どのような研修を受けるの?」、「教員の方はいつもどんな勉強をしているのだろう?」など教員の研修について疑問を持つ方は少なくないかと思います。
教員は教育の見本として、将来ある子どもたちに教鞭をとっているわけですから、常に時代の変化に対応していかなければなりません。そのため定期的な研修を受け、教員は常に新しい教育指針を掲げる必要があります。
今回は教員が受ける研修の種類や実施体系について詳しく解説していきます。
これから教育に携わる仕事に就きたいと思っている方の参考になれば幸いです。
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法律で研修は義務化
教員は法律によって定期的に研修を受ける義務があります。その背景には劇的に進む社会の変化やニーズに対応するために、教員単位のスキルアップが学校単位での組織力向上に繋がっていくからと考えられています。
また昨今は教員の大量退職や大量採用などにより、教員の経験年数の均衡が不安定な傾向があります。そういった部分から、これからの教員は求められる能力が多様になってくるのです。
教員の研修で重視されるものとしては「研究」と「修養」の充実がより求められます。これについては以下の法令条文にも明記されています。
教育基本法第9条
教育基本法第9条にはこのように定められています。「法律の定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」
学校の教員は難しい試験をパスして実際に教員となっても、常にその立場を深く理解した上で絶えず研究と修養に努める義務を全うする必要があります。
それは教鞭をとる者が将来ある子どもたちに対して、高いレベルでの教育をおこなう上で必要不可欠なことでしょう。時代にそぐわない教育は教育レベルを著しく下げる可能性があります。
教育公務員特例法第21条
教育公務員特例法第21条にはこのように定められています。「教育公務員は、その職務を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない」
教育基本法第9条と同じく、教育公務員特例法第21条においても職務遂行に対して絶えず研究と修養に努めなければならないと明記されています。
さらに「教育公務員の任命権者は、教育公務員の研修について、それに要する施設、研修を奨励するための方途その他研修に関する計画を樹立し、その実施に努めなければならない」と定められ、教員を採用するものは教員という身分を尊重した上で、研修に必要な施設や計画などの補助をしなければならないとされています。
そのため教員は国や教育委員会などのサポートを受けながら、個々のスキルアップを図ることができます。
教員が行う研修の種類
教員は絶えず研究と修養に努める義務があることはわかりましたが、実際にどのような研修があるのでしょうか。
教員がおこなう研修の種類は3つに分けられ、勤務外に自主的におこなうもの、勤務内に学校がおこなうものと行政がおこなうものがあります。
それぞれの研修について詳しく解説していきます。
自己研修
自己研修は勤務時間外に各自でおこなう研修のことです。ただし実際には校務が多忙なことがあり、なかなか自己研修がしづらい状況にあります。
そこで教育委員会や教員養成大学などでは、こうした自己研修の場を提供していることが多いです。他の学校の研究会などの参加も自己研修にあたり、教員同士の成長をおいて双方にプラスの刺激を生みます。そのため多くの学校では積極的に公開研究会の実施をおこなっています。
校内研修
校内研修は学校内の職員同士で教育についての研究をおこない各自のレベルアップを図り、学校単位での組織的な教育レベルの底上げをおこないます。
校内研修は2つに大別でき、日々の業務を通じておこなわれる研修と校内集合研修という形でおこなわれる研修があります。また場合によっては外部から講師を招いて指導を受けることもあります。
校内研修での成果を研究会という形で校外の教員などに公開して、フィードバックをもらい研修の質を高めていきます。こうした校内研修での交流が地域単位での教育レベル向上に繋がっていきます。
校外研修
校外研修とは国、都道府県または市町村の教育委員会などの行政機関が率先しておこなう研修です。国は国単位での教育目標実現のため、各教育委員会は個々の教員のレベルに合わせて、最適な研修を提案・実施します。
そのほかには民間企業や任意団体がおこなう研修と教職大学院での研修もあります。また教育課程や評価規準の改定時にはそれぞれの新説を学ぶための特設研修が実施されます。
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校内研修の実施体系
教員の校内研修は国単位でおこなっているもの、都道府県の教育委員会単位でおこなっているものとさまざまで、多くの種類があります。
全職員が対象となる研修、教員の経験年数に応じて受けるべき研修など種類は豊富にあります。
以下、くわしく解説していきます。
国が実施する教員の研修
国が実施する研修の多くは、独立行政法人教職員支援機構でおこなわれるものになります。前身の独立行政法人教育研修センターから平成29年より新たに発足された機関です。
現在はコロナ禍の影響があるため一般的な集合研修とは別にオンライン研修という形もとっています。目的別に研修が分かれており、学校の経営力を育成するものと研修指導者を養成するものの2つに大別されます。
以下、目的別の研修一覧になります。
学校経営力の育成を目的とする研修
教員の中から学校の中核となるべき人材を作らなければなりません。そこで経験年数に応じていくつかの育成研修が実施されています。
まずは次世代リーダー育成研修と中堅教員研修があり、これらは経験年数10年前後の教員が対象となり、マネジメント力と若い教員をけん引する力を習得することにより、各地域において中心的存在となる中堅教員を育成する目的があります。
次に校長研修や副校長・教頭研修があり、これは今後各地域の中核となるべき教員または活躍が期待されている教員が受講できます。
現在対象の役職に就いている教員は実際の職務との答え合わせをおこない、まだ管理職に就いていない教員はそのために必要となる知識などを深めることができます。
研修指導者の養成等を目的とする研修
学校としては校長の下に地域との連携をとりながら、さまざまな教員が専門性を遺憾なく発揮することが求められます。
そこで研修指導者を養成する目的として学校のマネジメントの推進や生活指導、グローバル化に対応する研修等があります。
これらの研修では学校単位で教育目標を推進する能力、個々の専門性を上げる力を受講した教員に指導する目的があります。
都道府県教育委員会等が実施する教員の研修
国が実施する研修については主に学校経営を目的とするもの、研修指導者の養成を目的とするものとなっていましたが、各都道府県が実施する研修は目的別でさらに細かく分類されています。
また各都道府県でおこなっている研修であるため、受講や相談などはお住まいの教育委員会に問い合わせしてください。
以下、目的別の研修の一覧になります。
全職員対象の研修
全職員が対象となる研修には「初任者研修」や「中堅教諭等資質向上研修」などがあります。
初任者研修は学習指導や生徒指導における教員にとって最低限必要となる事項についての研修です。新採用から1~5年以内の教員が対象となります。
中堅教諭等資質向上研修は中堅教員として必要な資質の育成や向上を目的とした研修です。経験年数が10年を超える教員、または8~9年でも特別に認められた教員が対象となります。
教職経験に応じた研修
教職経験に応じた研修として「5年経験者研修」や「20年経験者研修」などがあります。
5年経験者研修は経験年数が4~5年の教員を対象に実践経験を踏まえたうえで、教育の基本的な部分を研修して応用的な部分の充実を図る目的があります。
20年経験者研修は20年間の教員経験を振り返り、時代のニーズに対応した知識や教養を深める目的があります。
職能に応じた研修
職能に応じた研修は「生活指導主任研修」や「新任教務主任研修」などがあり、これらは経験年数が15~20年前後の教員が対象になります。
生徒指導主任研修は生徒指導教員として生徒指導の課題について理解を深め、資質の向上を図る研修です。新任教務主任研修は主任教員として必要な資質の育成や向上を目的とした研修です。
さらに「新任教頭・副校長研修」や「新任校長研修」などという管理職になった教員のための研修もあります。
新任教頭・副校長研修は組織マネジメントや教員の退勤管理・安全管理などの研修です。新任校長研修は人材育成や学校経営に関するマネジメントについての研修です。
いずれも今後の教育界の中核を担っていくであろう教員ばかりです。
その他の研修
その他の研修として「大学院・民間企業への長期派遣研修」や「指導改善研修」、「教科指導・専門指導に関する専門的研修」などがあります。
大学院・民間企業への長期派遣研修は、現職の教員を大学院や民間企業に派遣することで、学校教育に関する研究を進められる狙いがあります。
現状の教育課題を解決させる方法として多くの教員が長期にわたる派遣研修をおこなっています。
指導改善研修は、指導が適切ではない教員に対しておこなう研修です。対象となる教員の多くが人間関係の構築に問題があるとされています。該当の職員に対してカウンセリングや職場環境の改善などをおこないます。
教科指導・専門指導に関する専門的研修は、特定の教科や専門分野に特化した研修のことです。これにより各教員の強い部分を伸ばすことが期待できます。
研修は能力向上が目的
教員の研修は法律で定められており、もはや教員の仕事の一部といっても過言ではありません。
確かに教員は教員になるまでの過程もとても大変ですが、教員になってからも時代のニーズに対応するなどハイレベルの教育を求められます。
研修には自己研修・校内研修・校外研修とわかれており、とくに校内研修には教員の経験年数に応じてさまざま実施体系があることがわかりました。
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■参考文献
・文部科学省「教育基本法」
・文部科学省「教員研修の実施体系」
・独立行政法人教職員支援機構