教員採用試験とは?内容や倍率・2021年最新の解説

質問をする先生と挙手する生徒

教員採用試験は、難易度・採用倍率がともに高いことで知られています。
ここでは、教員採用試験の日程、受験資格、試験内容の解説や最新情報の採用倍率について詳しく解説します。

教育実習を予定している大学生の方はもちろん、社会人になってから教員を目指している方にも役立つ特別な情報となっておりますので、ぜひご覧ください。

目次

教員採用試験とは?その特徴

鉛筆を持つ女性

まずはじめに教員採用試験の概要についてご説明します。

教員採用試験の正式名称は「教員採用候補者選考試験(検査)」です。
公立学校の教員を採用するため、文部科学省が管轄し、各都道府県が実施しています。教員採用試験に合格すると、各教育自治体の「教員採用候補者名簿」に記載され、各学校の担当者と面談をしたのちに配属されます。

合格したら即採用とはならないことが特徴です。

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教員採用試験の大まかな日程

大まかな日程の確認

試験時期は自治体ごとに違いますが、例年3月下旬から4月ごろに実施要項の発表と同時に出願期間がスタートして、願書の受付も始まります。その後7月から9月にかけて自治体ごとに試験が実施されます。

多くの場合、1次試験と2次試験の2段階に分けて試験が実施され、1次試験は6~7月、2次試験は8~9月ごろに実施されます。(※自治体によっては3次試験を実施する場合もあります)

そして試験の合格発表は10月で、合格者は採用候補者名簿に記載された後に、配属される学校の校長や担当者との面談をしたのちに、4月からの赴任校が決定します。
現役大学生の場合は、3年生の秋から学習を開始し、4年生の夏に受験するパターンが一般的です。

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教員採用試験を受験するための条件

小学校の授業風景

教員採用試験には、年齢や欠落事項に該当していないことなどさまざまな受験のための条件があります。

教員免許状を持っていること

学校の種類(校種)や教科に応じた教育職員免許状を取得済み、または取得見込みの人のみ教員採用試験を受験することができます。

受験可能な年齢であること

満18歳以上であることが原則です。年齢上限は自治体によって異なる場合があります。文部科学省が発表した平成30年度の採用選考実績による、年齢上限の有無や上限年齢は以下の通りです。

年齢制限 割合
年齢制限なし 約50%
41~50歳 約37%
36~40歳 約12%
51~58歳 約1%

欠格事項に該当していないこと

地方公務員法第 16 条および学校教育法第9条に規定された欠格事項に該当する人は受験することができません。欠格事項は以下の通りになっています。

地方公務員法第 16 条

  1. 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
  2. 当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
  3. 人事委員会又は公平委員会の委員の職にあって、同法第六十条から六十三条までに規定する罪を犯し刑に処せられた者
  4. 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者

学校教育法第9条

  1. 禁錮以上の刑に処された者
  2. 懲戒免職の処分を受け教員免許状が失効している人で、失効の日から3年を経過していない者
  3. 法令違反や素行不良などにより教員免許状取り上げの処分を受けた人で、失効の日から3年を経過していない者
  4. 日本国憲法またはその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党や団体を結成、またはこれに加入した者

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教員採用試験の内容について解説

教室の椅子と机

一般的に「筆記試験」、「面接試験」、「実技試験」、「適性検査」で構成されている、教員採用試験の科目概要を解説します。

筆記試験

大きく分けて筆記試験には、「一般教養」「教職教養」「専門教養」「小論文」の4つに分けられます。それぞれの試験項目の傾向や出題範囲について、一つずつ解説していきます。

一般教養試験
出題ジャンルは「教科問題」「時事問題」「一般常識」に分かれています。「教科問題」のレベルは高校までに学習する範囲の国語、数学、英語、理科、社会からまんべんなく出題されます。教科書レベルなので難易度はそこまで高くありません。
「時事問題」と「一般常識」は過去3年程度の社会的なできごとや地域的な話題も出題されることがあり、幅広い知識が求められます。日頃から社会に関心を持ち、ニュースや新聞をよく確認することが対策になります。

教職教養試験
学習指導要領、文部科学省の通知文や報告書、中央教育審議会の答申など、日本の教育の目指している方向性を理解しているか問われる試験です。出題分野は主に「教育原理」「教育法規」「教育心理」「教育史」「教育時事」の5分野です。ほかにも、道徳教育、人権教育の原理などの分野からも出題されます。

専門教養試験
受験者の志望教科、校種に関する専門知識と教科に応じた指導要領や指導方法が設問として出題されます。主な傾向としては以下の3つになります。

  1. 学習指導要領からの出題は、教科の「目標」「各学年の目標及び内容」など
  2. 校種が小学校の場合は、高校までの標準的な学習事項が中心
  3. 校種が中学・高等学校の各教科では中学校から大学入試レベルまでの学習事項が出題範囲となり、教科の専門性が問われる

小論文
筆記試験の中に小論文を実施している自治体もあります。テーマはさまざまですが、この試験を通じて教員としての人格が適正かどうかチェックされます。

制限時間 規定文字数 論述テーマ
50~70分 600~1,000字 教育論、実践的な指導方法など

面接試験

面接試験では受験者の人格や教育に対する考えなどをチェックします。自治体によっては2次試験でおこなわれたり、複数回の面接試験を実施するところもあります。面接官は現職の校長、教頭や教育委員会のほか、民間企業の人事担当や民間人が起用されるケースもあります。主な面接試験の形式と傾向は次の通りです。

個人面談
面接官の質問に答える形式で、自己PRや志望動機、筆記試験でも問われた教職教養に関する質問、具体的な指導の在り方が問われます。回答した内容の正誤だけでなく、印象や所作、話し方といった人物像も評価対象になります。突拍子もない質問を出し、それに対する対応力が問われる場合もあります。

集団面接
個人面談のほかにも、受験者数人を集めて集団面接をおこなう場合もあります。個人面談と違うのは、複数の面接官がいることです。対面だけでなく背後に別の面接官が座って所作や様子をチェックする場合もあります。自分以外の受験者の意見を聞いているか、自分の意見だけを述べることに注力しないといった、受験者の「協調性」がチェックされています。

討論
受験者それぞれのコミュニケーション能力、協調性などを判定する試験です。少人数のグループに分かれ、指定されたテーマについて議論をおこない、結論としてグループで合意形成をおこないます。

模擬授業
限られた時間で、教室内での指導を受験者が実演する模擬授業がおこなわれる場合もあります。ほかの受験者や面接官が生徒役をやるほか、児童・生徒役がいないイメージ授業で実演する形式などさまざまです。自治体によっては、指導案の提出を求められる場合もあります。

実技試験

実技試験とは、面接官の前で実技を披露する試験です。とくに小学校教員や中学・高校の美術・保健体育・音楽・家庭科・英語などの教科の受験者において、実技試験がおこなわれます。実技試験の内容例は以下の通りです。

校種・科目 実技内容例
体育 水泳、跳び箱、マット運動
音楽 ピアノ演奏、歌唱など
美術 デッサン
家庭 調理、被服
英語 スピーチ、ディスカッション

(※一部自治体では実施しない場合あり)

適性検査

一部の自治体では、民間企業の就職試験におけるSPI試験のように、教員に求められる特性について客観的に判定するための適性検査が実施される場合があります。単純な作業を繰り返して、作業効率性や正確性をチェックする「クレペリン検査」や、性格検査などを実施する自治体もあります。

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教員採用試験の採用倍率【2021年最新】

求人倍率グラフ

こちらでは令和元年度実施の教員採用試験のデータをもとに、今後の採用動向と採用倍率の推移について解説します。

募集校種別の教員採用試験の採用倍率

令和元年の教員採用試験全体での平均の採用倍率は3.9倍で、前年度の4.2倍から減少しました。中でも小学校の採用倍率は前年度の2.8倍からさらに減少して2.7倍となり、昨年に続き過去最低を記録しています。

教員採用試験の採用倍率|都道府県・政令指定都市別ベスト&ワースト3

文部科学省が公開している「令和元年度公立学校採用選考試験の実施状況について」をもとに、昨年の採用倍率が高い都道府県・政令指定都市と低い都道府県・政令指定都市のトップ3をそれぞれ紹介します。

競争率が高い都道府県・政令指定都市(小中高すべて含む)ランキング

1位 沖縄県 8.1倍
2位 高知県 7.4倍
3位 神戸市 7.1倍

競争率が低い都道府県・政令指定都市(小中高すべて含む)ランキング

1位 北九州市 2.1倍
2位 山形県、富山県 2.4倍
3位 佐賀県、長崎県 2.7倍

上記は小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、養護教諭、栄養教諭の合計から算出している倍率です。

また、小学校の教員採用では多くの県市で競争率(採用倍率)の低下傾向が続いていて、一部の県市で著しく低くなっています。
データで報告されているのは下記の通りです。

小学校の採用倍率が2倍未満の県市:山形県、福島県、富山県、山梨県、広島県・広島市、山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、宮崎県、北九州市

大学・短大など出身校の種類別の教員採用試験の倍率

続いては採用者数全体の学歴別の内訳をみていきます。昨年の教員採用試験の合格を経て、採用された人数の合計は35,058人でした。

採用者数の学歴(出身大学等)別の内訳

区分 小学校 中学校 高等学校 計(※)
国立教員養成大学・学部 人数 5,129
(5,413)
2,156
(1,965)
704
(674)
9,027
(9,103)
比率 30.7%
(31.8%)
23.6%
(22.7%)
16.0%
(15.5%)
25.7%
(26.0%)
一般大学・学部 人数 10,297
(10,249)
5,938
(5,595)
2,831
(2,768)
22,309
(21,861)
比率 61.7%
(60.2%)
65.0%
(64.7%)
64.2%
(63.7%)
63.6%
(62.5%)
短期大学等 人数 401
(464)
115
(145)
28
(23)
810
(917)
比率 2.4%
(2.7%)
1.3%
(1.7%)
0.6%
(0.5%)
2.3%
(2.6%)
大学院 人数 866
(903)
923
(945)
850
(880)
2,912
(3,071)
比率 5.2%
(5.3%)
10.1%
(10.9%)
19.3%
(20.3%)
8.3%
(8.8%)
人数 16,693
(17,029)
9,132
(8,650)
4,413
(4,345)
35,058
(34,952)
(注1)「計(※)」は小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、養護教諭、栄養教諭の合計
(注2)「国立教員養成大学・学部」とは、国立の教員養成大学・学部出身者をいう
(注3)「短期大学」には、短期大学のほか、指定教員養成機関、高等専門学校、高等学校、専修学校出身者等を含む
(注4)()内は、前年度の数値

このうち、一般大学・学部出身が22,309人で全体の63.6%。次いで、国立教員養成大学・学部出身者が9,027人で25.7%、大学院出身者は2,912人で8.3%。短期大学等(指定教員養成機関、高等専門学校、高等学校、専修学校を含む)では、810人で全体の2.3%となっています。

採用人数自体は、昨年度に比べて全体で106人増加しています。
また、中学校と高等学校の採用人数が増加しているのに対し、小学校の採用人数は300人ほど減少しています。

出典:「令和2年度(令和元年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況について」(文部科学省)

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教員採用試験に不合格でも教師は目指せる

教員採用試験に不合格でも教師は目指せる

教員採用試験の仕組みや、試験科目、おおまかな日程など概要を解説しつつ、採用状況に関するデータなどを解説しました。教員採用試験の合格を目指している人は、これらの数値や試験の動向を参考にしてみてはいかがでしょうか。

もし、教員採用試験に落ちてしまった場合でも、教員免許を持っている方であれば、私立の教員や、公立の講師を目指すことは可能です。

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■参考文献
東京都教育委員会「令和2年度東京都公立学校教員採用候補者選考(3年度採用)の日程について」
文部科学省「第1~9表、図1、小学校教員採用における 外国語活動に関する取組(平成30年度公立学校教員採用選考試験の実施方法について)」
文部科学省「教員免許制度の概要」
埼玉県「試験に関するよくある質問(令和6年度教員採用選考試験)」